化物と人間 11

血を洗い流し、少し眠った。
その後は食事を取り、彼の様子を見に部屋に行ったが、鍵に阻まれた。
「おい、ジョジョ」
扉を叩くが、反応はない。
声は聞こえているはずだ。
あのことを後悔しているのかは、知らないが、自分には関係ない。
「夜、買い物に行く。貴様の服もついでに買うぞ。分かったな」
彼の服を駄目にしたのは、自分だ。自分の服も買おうと考えていた。
彼に破られても大丈夫なように。
返事はなかったが、そこを後にした。
時間になったらマスターキーでも持ってきて、扉を開け、連れていけばいい。

日が沈んでから、出かける準備をしていると、ジョナサン自ら、自分の部屋へと来た。
その表情は暗いが、行けるのかと聞けば、頷いた。

屋敷を出るときに、足がすくみ、ジョナサンは扉の前から進めずにいた。
もう日は沈んでいて、消滅することはないが、人間ではなくなってから、初めて外に行く。
見える景色は昼間のように明るい。
「どうした?」
後ろからディオが声をかけてきた。外に出ないのを不思議に思っているのだろう。
「少し……怖くてね」
見た目は何も変わっていないため、吸血鬼とバレることはないだろうが、ふとした拍子にバレるのではないかと。
いきなり、腕を組まれた。密着して彼女の匂いが濃くなる。
「わたしのそばを離れなければ大丈夫だろう」
これでは、離れようにも離れられない。
腕にあたる柔らかいものを意識してしまい、顔が赤くなる。
「は、離れないから……あの、その……」
「恐怖心はなくなったか?」
彼女は笑い、自分から離れていく。
どうやら、紛らしてくれたらしい。
屋敷から一歩、踏み出せば後ろで彼女が扉を閉めた。
「さて、行くぞ」
自分の前を歩く彼女がとても頼もしく、本来ならば守る存在に守られる自分が情けなくなってしまった。

「暗い」
「これだけ見えていればね」
ディオはどこか不安そうで、自分の服の袖を掴んでいる。
町に来るのは、彼女も人間になってからは初めてで、こんなにも暗いのかと驚いていた。
「人間はよくこんなところを歩いているな……」
「普通だから」
彼女が自分の後ろからついてくる形となっているが、自分はこの町に詳しくはない。
目的地までの道を教えてもらいながら、歩いていく。

服屋に着き、店員と彼女と共に自分の服を選ぶことになったが。
「こちらはどうでしょう?」
「もうすこし暗い色はないの?」
「お色違いはこちらですが……」
自分より、なぜか彼女の方が真剣になっている。
それを見ながら、次は何を着させられるのだろうかと思っていた。
自分の服はついでと言っていたはずなのだが。
「ジョジョ、次はこれ」
彼女が差し出してきたのは、ワイシャツに紺色のネクタイと黒のベスト。
「……君の服は?」
「わたしはもう選んでもらっているわ」
彼女の後ろで店員が忙しなく走り回っているのは、そのためか。
それを持ち、試着室に入る。これで何度目だろうか。
それを着て、試着室から出ると、店員はお似合いですと笑顔で誉めるが、隣の彼女は納得していない表情。
「ベストは脱いで、こっちのジャケットを着て」
ジャケットを押し付けられ、試着室に押し込まれた。
着せ替え人形ではないのだけれど。苦笑しつつ、彼女の言う通りにする。

何着か自分の服と彼女のドレスも買った。
大量の紙袋に大丈夫かと言われたが、自分が軽々と持つと、驚いた顔をされた。
服屋を出て、次は食料の買おうとしたが、服選びに時間がとられたらしく、店は閉まっていた。
明日、買えばいいとディオが言ったので、帰路についた。


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2013/07/31


BacK