イイコイイコ |
兎龍・先輩からご褒美! |
彼シャツ |
兎龍・題名のまま |
飴細工 |
虎薔薇・虎徹さんからのプレゼント |
カタルシス |
空月・二人で寝ていると…… |
あなたの夢 |
月楓・夢をみる楓ちゃん |
お裾分け |
月楓・微妙な関係の楓ちゃんとユーリさん |
優しい手 |
空月・ユーリさんの独白 |
殺人ごっこ |
空月・ふざけるユーリと真面目なキース |
それはついてはいけない嘘 |
虎薔薇・オジサンが幸せになることを聞いたカリーナ |
リボン |
月楓・まだぎこちない二人 |
「バーナビーさん、屈んで」
いきなり、ホァンにそう言われ首を傾げる。
「なぜですか?」
「なんでも!」
そう言う彼女は、笑顔だ。
何をしてくるのだろうと、恐る恐る屈むと、頭に何かがあたる。
「バーナビーさん、頑張ってるから」
頭に手がのっているようで、頭を撫でられていた。
「えらい、えらい」
撫でられていることを自覚すると、途端に嬉しいような恥ずかしいような、入りまじった感情が湧き出てきた。
頭を撫でられるなど、久しい。
「あれ?バーナビーさん、顔ま……わっ!」
あまり顔を見られたくなくて、力強くホァンを抱きしめる。
まだ、頭は撫でられていた。
「やっぱり、恥ずかしい?」
「いえ、嬉しいです」
頬が緩んでいるのが分かる。
きっと、人に見せることはできない表情だ。
2013/04/16
BacK
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「バーナビーさんの服って大きいねー」
着ようとした上着は、ホァンに取られ、なぜか彼女が着ている。
年齢も離れているし、性別も違う。
大人の自分が着ているものを、子供の彼女が着れば、大きいわけで。
上半身は全て隠れ、手も出ていない。そんな袖を上下に振り、パタパタしている。
「そのままでいてください」
「え?バーナビーさん、寒いでしょ」
「僕なら大丈夫です」
「じゃあ、このままでいる!」
無邪気に喜んでいるホァンを見つつ、やはり半袖だと肌寒いと感じていた。
2013/04/16
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「ほらよ」
いきなり、差し出されたのは、棒に刺さった青い薔薇の飴細工。
「どうしたの、コレ」
「出店で見つけて買ったのはいいんだけど、俺、食えねえし、やるよ」
「なんで買ったのよ」
呆れつつも、断る理由もないので、それを貰う。透明な袋に包まれてはいる薔薇は、とても綺麗で、食べるのがもったいないと思えるほどだ。
「なんか、それ見て、お前を思い出してさ……買わないとなーって」
その言葉に、嬉しいと思いつつ、顔には出さないようにした。
「……ありがと」
「いいって、じゃあな」
彼が去った後に、飴をなめた。
甘くておいしい自分の分身。
2013/04/16
BacK
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腕が冷たく感じ、目を覚ました。
すすり泣く声が聞こえる。
枕代わりになっている腕が濡れていた。
そばにいる存在を一層、抱き寄せ、名前を呼び、背を撫でる。
彼が眠っている時に泣くのは、たまにあることだ。
苦しいのだと思う。
一人では背負いきれないものを、彼は背負って生きている。
弱音など吐かず、崩れそうになりながらも彼は立っていた。
その姿は美しく、酷く悲しい。
「大丈夫だよ、ユーリ」
今は何もかも忘れて、眠ればいい。
目尻にたまっている涙を指ですくう。
泣きやむんだのを確認し、自分も目を閉じた。
2013/04/20
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目を開けると、顔があった。
「……!」
父の顔だった。
今日は一緒に寝たことを思い出す。
寝返りをうち、背を向ける。
炎に包まれる夢を見た。青い炎に。
熱さも苦しさもなく、ただ炎にのまれていくだけ。
なぜか、守られているような感覚があった。
あの人の、能力を発動したときを思い出す。
自分の手から出た炎は、熱さはなく、ただ揺らめいて綺麗だった。
ユーリもこんな不思議な夢を見るのだろうか。
次、会うときに聞こう。答えてくれるかは、分からないけれど。
朝を迎えるために、目を閉じた。
2013/04/20
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春だと言うのに、まだ風は冷たい。
隣の少女は、手をあたためるために、息を吐きかけている。
「寒いですね」
「そうですね」
自分が彼女に分けてあげられるものはない。
手を見つめるが、自分が触れていい存在ではなく、この手は冷たいだけだ。
「ユーリさん」
彼女はこちらを見上げていた。
「ちょっと、手を」
手がなんなのだろうか。
彼女の方に手を差し出すと、両手で握られた。
小さな手はあたたかい。
「やっぱり、冷たい」
この手がぬくもりを宿す時は、能力を使っているときぐらいだろうか。
「お裾分けです」
手が強く強く、握られる。
綺麗な手が汚れると言いたかったが、そんなことを言えば、彼女は離さなくなるだろうから、お礼だけ伝えた。
2013/04/24
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手を繋ぎ、歩く。
通りには、自分たち以外に人がいないため、その行為を受け入れた。
隣にいるキースはとても嬉しそうにしている。
力強く握られる手。人を救うために差し伸べられる手だ。
いつかは、このあたたかく優しい手にひかれ、断頭台へとのぼり、裁かれるのだ。
そう自分は願っている。
彼が望まなくとも。
2013/05/02
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白い手が首へと添えられ、指がゆっくり絡みついた。
「なんだい?」
「抵抗しないんですね」
抵抗なんてするものか。本当に殺すつもりなら、能力で灰にされている。
しかも、今の彼では殺せない。彼の裁く対象でもない。
首を締める力が、強くなっていくに連れ、呼吸ができなくなっていく。
しかし、自分は抵抗しない。それを受け入れていた。
「……呆れました」
あっさりと手は離されてしまった。
「本望だよ」
呼吸を整え、笑顔で言えば、彼は悲しそうな顔をする。
そんな顔をしないでと、先ほどまで、自分の首を締めていた指に自分の指を絡めていく。
「でも、その時はユーリも一緒だ」
殺してくれるのはいいが、彼を一人で置いていくわけがない。
「道連れですか」
「一人じゃ寂しいからね」
その時は、痛みを感じさせずに、一瞬で。
指を絡めた手を握る。
彼が自分から逃げないように。
2013/05/02
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彼が笑顔で、再婚することを告げてきた。
どうやら、娘もよくなついているとか。
いつの間に、そんな人がいたのか。彼の全てを知っている訳ではないけれど、愛していた人がいたなんて。
「よ、よかったわね……おめでとう……」
驚いていたが、祝福の言葉を述べる。
彼が幸せになるのだ。喜ばなければ。
笑顔を浮かべた。
「え、あ、ブルーローズ!?」
目から、大粒の涙がこぼれた。
やはり、悔しい。亡くなった彼の妻には、適わないと諦めていた。同じ土俵なんて立てない。
それは、しょうがないが、再婚するということは、彼の好きな人は生きているということで。
なぜ、自分ではないのだろう。
誰にも、胸に抱えるこの気持ちは負けないのに。
「な、泣くほど嬉しいのか?」
「そうよッ!良かったわね!!」
本当の気持ちなんて言えない。
怒りに似た感情を彼にぶつける。
こんなことをしているから、子供扱いされるのだ。
「あ、あのさ……今日、エイプリルフールでよ」
聞いた言葉に、顔を上げる。
彼は、ひきつった笑顔を浮かべていた。
「う、嘘でーす……なんて」
「馬鹿ッ!」
能力を発動させ、凍り漬けにし、彼に背を向け歩き出す。
頭を冷やして、反省すればいい。
この涙も無駄だったのだと、拭う。
頭にはきていたが、嘘だと聞いて、安心する自分もいた。
2013/05/06
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隣に座る彼の髪を結うリボンが緩くなっていた。
「ユーリさん、リボンが」
そう言うと、ユーリはリボンを触り、解いた。
まとめられていた髪が広がる。
結いなおそうとユーリは髪を手でまとめる。
「私、します!」
主張するよう手を上げる。
こちらを見たユーリは、手を下ろすと、リボンをこちらに差し出す。
させてもらえる許可をもらえ、素直に嬉しい。
「では、お願いします」
「はい!」
リボンを取ると、ユーリはこちらに背を向けてくれた。
彼の髪を慎重にまとめ、リボンで結ぶ。
少しの時間だったが彼に触れている時、手が彼から離れてもドキドキしていた。
「終わりましたよ」
「ありがとうございます」
彼はこちらを向くと、丁寧に頭を下げる。
「どういたしまして」
まっすぐ彼を見ていると、顔を上げた彼と目があった。
しかし、すぐに目がそらされる。
嫌われているのだろうかと、悲しくなる。
自分は、嫌っていないのに。
見上げた彼の表情は、無表情で何も読めない。
理解したかったから。
だから、触れてみたけれど。
まだ、彼のことは分からない。
2013/06/15
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