目次


題名からその小説にとびます

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狂うには充分な時間

DIOジョナ 狂っている二人

光があり影があり

ディオジョナ・社交場では目立たないジョナサン

笑う吸血鬼

DIOと徐倫 徐倫の三つ編みを結うDIO

伝えたい言葉

ディオジョナ イベントで配布したペーパー壱

愛しい貴方へ

ディオジョナ イベントで配布したペーパー弐

これはただの拘束具

ディオジョナ イベントで配布したペーパー参

儀式

ディオジョナ 苦悩するジョナサン

君の腕という牢獄の中

DIOジョナ イベントで配布したペーパー捌

大きな子ども

DIOジョナ ASBかEOHの世界線

同じ時間 同じ道

DIOジョナ 上の話と対になる話


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狂うには充分な時間


眠っていると、名前を呼ばれ、目を開けるとジョナサンが自分に覆い被さっていた。
彼が積極的なのは珍しいとDIOが思っていると、彼が口を開く。
「ぼくを解放してくれ」
「断る」
解放したところで、彼は死ぬだけだ。自分を置いて天国にいくなど、許さない。
「じゃあ、全て返すよ」
ジョナサンはいつのまにかナイフを持っており、それで首を切っていく。ぐちぐちという音を出しながら、肉を切り、垂れてくる血が、自分に降り注ぐ。
「君から貰った血も、身体も返すから」
視界が赤い。その中でジョナサンの首が揺れて、身体から首がぶら下がる。
彼は血まみれになりながら、笑う。
「満足だろう?」
ぶつんという音で首が身体から離れ、自分の胸の上に落ちてくる。
血にまみれた目がこちらを見つめている。
「ぼくを殺してくれ」
普通なら死んでいるだろうが、死ねないのだ。吸血鬼なのだから。首を跳ねようが、身体がなくなろうととも。
「だめだ」
主人を失った身体を退け、頭を抱く。
「離してやらないさ」
頭を持ち上げ、唇を重ねる。唇についた血を混ぜて。
「全て奪うまでな」
まだまだ奪い足りない。


2018/01/31

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光があり影があり


ジョナサンはパーティー会場の角の長椅子に座り、絢爛豪華で美しい社交場を見ていた。
踊る男女や心地よい旋律を奏でる音楽団、お酒や軽食を手に話し合う人々。
その中に今までいたのが信じられないほど、自分の回りには誰もいない。全て義兄弟の方へといってしまい、彼の影になってしまった自分はそこから離れた。
自分がいなくとも、会話やこのパーティーは続くのだ。
残り少ない酒を煽り、自分だけ帰ろうかとしたとき、名前を呼ばれた。
「こんなところにいたのか」
自分を見下ろすのは、義兄弟のディオだった。
「君がこんなところにいていいのかい?」
こんなところにいても、彼は輝いている。キラキラと眩しい。
「おまえを探していたんだよ」
ディオは隣に座るや否や、こちらにもたれかかってきた。
「肩を貸せ、酔った」
肩に置かれる頭。彼は目を閉じていた。顔を見るに、酔っているようには見えない。
「水、持ってこようか」
「いらん。動くな」
「……わかったよ」
枕代わりでもなんでもなろう。影は光のそばにいるのが常だ。


2018/01/31

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笑う吸血鬼


「おい」
後ろから声をかけられ、徐倫が振り向くとDIOがいた。
「何?」
少し警戒する。父との因縁がある彼には、気をつけろと父と周りには言われてていたし、あの神父の友人だ。
父が近くにいれば、すぐさまここから離れることになっただろう。
彼は自身の首の後ろを指す。
「三つ編みがとけかけているぞ」
「え」
言われたそこを触れば、髪が解けたのが分かった。足元を見ると、髪を結わえていたゴムが落ちていた。
それを屈んで拾う。
「面倒ね」
「わたしがしてやろう」
「え?」
呟いた言葉に返答があったのにも驚いていたが。
「で、できるの?」
「それくらいできる」
馬鹿にするなと目は言っていた。自分よりうんと歳上の彼が、三つ編みくらいできても、不思議ではないが。
「ほら、来い、承太郎の娘」
彼は来いと手招きする。
呼び名に少し不満があった。自分にはちゃんと名前があるのだ。彼は自分の名など知らないのだろうか。それとも、敵の娘の名前など興味がないだけか。
「徐倫、空条徐倫よ」
彼に近づき、まっすぐ彼の目を見て名乗る。
「……徐倫、そのままではできんぞ」
彼に三つ編みをしてもらうということは、背をむけるということだ。
「変なことをしたら、ぶっとばすから」
スタンドを彼の背後に出し、構えさせる。
「腹はすいていないが、お望みなら飲んでやるぞ」
「望んでなんかいないわよ!」
「血の気の多い女だ」
そうDIOが呟いたと同時に、彼が目の前から消えた。後ろから感じる気配に、スタンド能力を使われたことを理解した。
「動くんじゃあない」
体が動かない。スタンドが押さえつけられているのだ。敵に隙など見せてしまうから、また自分はーー。
この状況をどう抜け出そうか思案していると、髪が引っ張られる。首でも折ろうというのか。
DIOの気配を探っていたが、髪を引っ張るだけで何もない。
「終わったぞ」
そう言うや否や、体が動くようになり、振り返れば、DIOの顔が間近にあった。間合いに入られ、反撃ができない。
「なにして……」
触れられていた髪に触れ、確認すれば、元通りの三つ編みになっていた。本当に彼は髪を結ってくれたらしい。
「礼くらい言えんのか」
「え、えーと、あ、ありがと……DIO」
彼は手を振り、背を向け、去っていく。
お礼を言ったときに、彼は笑ったが、あんな優しそうな顔ができるのだ。
顔が熱いのはきっと気のせいだ。


2018/01/31

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伝えたい言葉


目のまえには金髪の男性の後ろ姿。義兄弟のディオ・ブランドーだ。ジョナサン・ジョースターはその背に手を伸ばす。その姿は触れると消えてしまった。
「ジョジョ」
いきなり、後ろから腕が体に巻ついてきた。
「ディオ……」
肩に乗る顔を見る。目の前にいたはずの人物は、なぜか、自分を後ろから抱き締めていた。
「おれを殺したかったんだろう?」
手に何かを持っていた。視線を移せば、ナイフだった。それは父の命を奪ったもの。彼が自分を殺そうとしたもの。
「それは……君じゃあないか」
これで自分を殺そうとしたのは彼だ。彼の手が自分の手を掴み、刃をこちらに向ける。
「本当にそんな感情はなかったと言い切れるのか?」
手が離れ、指が刃をなぞり、躊躇いもなく、てのひらを突き刺す。嫌な感触と手に血が垂れていく。刃から手を抜くと、その手で頬に触れてくる。
ぬるりとした感触。鉄臭い匂いが鼻をつく。
「本当に? あの炎の中、おれを殺したのは誰だ?」
いきなり、周りが炎に包まれる。たじろぎそうになるほどの熱さが自分を襲うが、腕に回る拘束がきつくなった。
「おまえはずっと、おれのことを」
「やめてくれッ!!」
言葉で耳に囁かれる言葉を遮ると、全てがなくなった。囲っていた火も持っていたナイフも血も体に回る腕も。
あのときは彼は父を殺し、自分と屋敷にいる無関係の人たちも殺そうとしていた。しかも、ディオは人間をやめてしまった。だから、せめて家族の自分が――。
脚の力が抜け、地に膝をつく。見下げるのは真っ暗な闇。自分はどこに立っているのだろう。酷く寒い気がして自分の体を抱いた。
「なあ、ジョジョ」
前から声がし、見上げれば、ディオが自分を見下ろしていた。その顔には石仮面。
「おまえは、おれが憎かったんだろう?」
石仮面を外した彼はとても悲しそうな表情をしていた。
そんなことはない。彼とは兄弟として信頼関係を築きたかった。幼い頃のことを忘れて。
口を動かしても言葉はでなかった。なぜか声が出ない。
彼は笑みを浮かべる。とても、悲しそうな美しい笑み。
それは、石仮面を被せられ、見えなくなった。

「……ディオ!」
義兄弟の名前を呼びながら起き上がる。暗い天井が見え、病室なのだと頭が理解していく。体に走る痛みに、再度ベッドに横になる。
ここで看病をしてくれていたエリナ・ペンドルトンはいなかった。今は真夜中だ。隣の部屋で寝ているのだろう。
自分はディオを殺した。その日から、ずっと彼の夢を見ていた。全身の火傷や怪我のせいで、意識がなかったときもだ。
罪悪感が見せているのか、それとも彼の怨霊が見せているのか、わからない。
「ディオ、大切な家族だったよ」
夢の中では言えなかった言葉は、現実だとこんなにすんなりと言える。今度こそ言おうと目を閉じる。伝えられば、ディオから解放される気がするから。
彼に会えることになぜか、少し嬉しいと思う自分がいた。


2018/07/31

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愛しい貴方へ


ジョナサンは今日は上機嫌で帰ってきた。
注文したものができたと店から連絡があり、引き取りに行ったのだ。
それはディオ・ブランドーへの――恋人への贈り物だ。
彼とそういう関係というのは二人だけの秘密だ。病に伏せている父にも伝えていない。いつかは、言わなければならないだろうけど、今はこの贈り物を彼に届けよう。
それを懐にしまい、ディオの部屋に向かう。気持ちが体を急かしているのがわかった。
ディオの部屋の前で、深呼吸して、扉をノックし、部屋に入ると、ようやく帰ってきたのかと彼はそばまでやってくる。
「右手を出せ」
言われた通りに手を出せば、彼は手を掴んで、いつの間にか持っていた指輪を自分の薬指へとはめる。
「見られたくないなら、首からさげてろ」
そう言って握らせられたのはチェーン。
「え……え!?」
驚いて指輪と彼の顔を何度も交互に見た。ぴったりなそれにいつのまに彼は自分の指のサイズを測ったのだろうか、いつこれを注文したのかという疑問が浮かんでくる。
「なんだ、嬉しくないのか」
彼は不機嫌そうな顔になる。
「いや、嬉しいよ! ありがとう、ディオ」
手に持っていたチェーンをポケットに入れ、お返しがあると懐からプレゼントを取り出し、彼に差し出す。
「……なんだ?」
彼は驚いた顔をして、受け取り、リボンをとき、それを開けた。みるみると彼の目が見開く。
「指輪、だよ」
彼が寝ている間に指のサイズを測り、注文していたものだ。宝石も何もないが、内側には自分の名と彼の名前が刻まれている。
彼は指輪を取ると、こちらに投げてきた。それを慌てて受け止めると、彼は右手を自分に差し出していた。彼がしたように、彼の薬指に指輪をはめる。
ちゃんとぴったりと入るそれに安心する。
「ディオが指輪をプレゼントしてくるから、驚いたよ」
同じ日に指輪をプレゼントすることになるとは。彼とどこかで通じあっていたのかもしれない。
「ふん、おまえが女に言い寄られても、断れるように、だ」
これを見せれば、心に決めた相手がいるのだと分かってくれるだろうか。
「おまえはおれのものだからな」
彼は自分の手を取り、顔へと引き寄せ、指輪に口づける。笑った彼の目があやしく光り、自分をとらえる。
彼の手を強く握る。離れないように、離してしまわないように。
「ディオ、一緒にいようね」
「ああ、ずっとな……」
手が握り返される。
きっと自分たちは二人で一人。もう一人では生きていけない。

ディオはもう、ぼくの半身だ。


2018/07/31

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これはただの拘束具


ディオは自分の部屋で指輪を眺めていた。
注文したものを店に引き取りに行き、帰ってきたのだが、これをつける人物はいなかった。指輪の中には自分とその相手の名を刻んでいる。
探し人ジョナサン・ジョースターはどこに行ったのか。使用人に聞いたところ、自分が帰ってくる少し前にでかけたと。
指輪を上に指で弾き、落ちてきたそれを受け止める。
部屋の扉が叩かれ、返事をすれば、部屋に入ってきたのは待ち人だった。
「ようやく帰ってきたか」
指輪を握りしめたまま、ジョナサンの前へと立ち、右手を出せと促す。彼は不思議そうな顔をしながら、右手を自分の前へと差し出した。
その手を取り、薬指に指輪をはめる。彼を見れば、目を見開いているだけだ。
「見られたくないなら、首からぶら下げろ」
そう言ってポケットから取り出したチェーンを左手に握らせた。外すことは許さない。これはジョナサンが自分のものだと言う証なのだから。
彼は困惑しつつ、自分の顔と指輪を交互に見るだけで、何も言わない。
「なんだ、嬉しくないのか」
せっかく用意してやったのに。首輪にしては、とても高いものだというのに。
「いや、嬉しいよ! ありがとう、ディオ」
彼はにっこりと笑う。
そうだ、もっと感謝をしろと思っていると、彼はお返しがあると懐からラッピングされた小さな箱を取り出し、自分に差し出してくる。
礼をされるとは思ってもみなく、驚いてしまった。
それを受け取り、リボンをとき、開けてみると中に入っていたのは。
「指輪、だよ」
彼は恥ずかしそうに赤い頬をかく。
その指輪を取り、彼に投げ、右手を目の前に差し出してやる。
彼は自分と同じように薬指に指輪をはめる。ぴったりのそれを眺める。自分があげたものと同じ、宝石がないシンプルなものだ。
「ディオが指輪をプレゼントしてくるから、驚いたよ」
それはこちらの台詞だ。
「ふん、おまえが女に言い寄られても、断れるように、だ」
疎い彼は女性の誘いに気づかないことが多い。女がジョナサンに近づこうものなら、邪魔をしていたが、いかんせん自分は一人しかいない。
隙を狙い、彼の前に立っている女もいる。少し前に盗られそうになったこと思い出していた。
「おまえはおれのものだからな」
彼の手を引っ張り、指輪に口づける。彼を縛る美しい小さな拘束具。
 微笑むジョナサンは自分の手を握ってきた。痛いくらいに。
「ディオ、一緒にいようね」
「ああ、ずっとな……」
手を握り返す。
そうやって、自分だけを見ていればいい。彼は一番のお気に入りの玩具なのだから。

ジョジョはもう、おれのものなのだから。


2018/07/31

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儀式


「ジョジョ」
名前を呼ばれ、本を読んでいたジョナサンが振り向くと間近にディオの顔があった。
「!」
驚いていると、唇が重なる。
「慣れろよ」
彼は笑い、髪をくしゃくしゃにして、手を振り、部屋を出ていく。
ディオの姿が見えなくなった後、熱くなっている顔を本で覆う。
彼は気まぐれでキスをしてくる。こんなことを、なぜ、してくるのかと聞いてみたが、ディオは信愛の証だと言って、開いた口を口で塞いできた。
同性同士でこんなことをするべきでない――とディオに言ってはみたが、彼は悲しそうに自分と仲良くしたいだけだと言う。
仲良くしたいだけなら、普通に接すればいいのだと言ったが、それだけでは伝わらないからと。
その言葉に自分がディオのことを信用していないことを見透かされているようだった。幼いときにされたことを自分は忘れられないからだ。
キスを一度、拒否したこともあったが、嫌いなのかと問われ、違うのだと言えば、じゃあ、拒まないでほしいと悲しそうに笑い、口づけされた。
違う、違うんだ――と声にならない言葉を繰り返していた。
口づけをせずとも、仲良くできるのだと言いたかったが、また拒めば、信用してないと彼は思ってしまうのでは――とディオを受け入れていた。
そんなことがズルズルと続いている。
忘れた頃に繰り返されるキスに翻弄されている。
慣れるだろうと思っていた。
しかし、いつまで経ってもディオと口づけをすると、鼓動が早くなり、顔が熱くなる。
彼とは家族で兄弟だ。それ以上の気持ちは持っていない。持ってはいけない。
これは自分とディオが家族になるための儀式なのだから。


2019/05/27

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君の腕という牢獄の中


ジョルノ・ジョバァーナと彼を吸い込んでいった渦のようなものに、スタンドも消えていった。
部屋にはジョナサン・ジョースターとDIOだけが残される。

「どうか、元気で……」
最後まで言えなかったことにジョナサンは後悔する。
帰る前に、伝えたいことはたくさんあった。昨日の謝罪やジョルノがいて楽しかったのだと。執事に届けてもらった言葉では足りない。もっと早く、彼が帰ることを知ることができれば――。
しかし、この気持ちは自己中心的だ。彼は会いたくなかったから、自分たちに帰ることを伝えなかったのだろう。
「ようやく、帰ったか」
ディオは実の息子が帰ったというのに、せいせいしたと言葉を吐き捨てる。
「君は……」
ディオに向き直れば、彼が腰に手を回し、密着してくる。自分のものだと主張するように。もうジョルノはいないのに。
「もうあの子は……ジョ――」
口が口で塞がれる。
「あいつの名はもう口にするな。おまえはおれの名前だけ呼んでいればいいんだからな」
なぜ、そこまで彼を毛嫌いするのか。危害なんて、加えられていないのに。
「今後、ジョースターが現れたのならば、会わせんからな」
彼が決めることではないのだけれど――と言葉はせずに思っていると、頬をなでられた。
「おまえに触れていいのは、わたしだけだ」
そのなでる手は酷く優しい。その手で自分の子供の頭をなでればよかったのに。
頬をなでていた手は下へと移動し、首をつかむ。
「……奪われるくらいなら、おまえを殺す」
じわりとつかむ手に力が込められ、首が絞められる。先ほどの優しさはどこにいったのだろう。愛と鞭を使い分けているのだろうか。
「おれにはおまえしかいない」
はっきりと伝えられた言葉とディオの表情に困惑してしまう。
「なんで……」
なぜ、そんなに悲しそうなのか。今の言葉の意味はそのまま受け取ってしまっていいのだろうか。
「ぼくは……君と一緒に、いるから……」
 何度も繰り返している言葉だった。そう答えるしかなかった。自分はディオと一緒にいるべきなのだと、彼を止めるのは自分の役目なのだから。
彼の頬に手をそえると、悲しそうな表情は消え、笑顔を浮かべ、手に頬をこすりつけてくる。
「ああ、おまえには、おれしかいないのだからな」
首から手が放れ、腕が背に回る。
「ジョジョ、きさまはおれのものだ」
この腕からは逃れることはできないのだろうと、目を閉じ、ディオの背に手を回した。

DIOはジョナサンが腕の中にいることに安心していた。あの夢はただの夢だ。もうあの子供はいない。
彼はずっと自分のそばにいるのだから。永遠に続くこの世界で。


2019/12/25

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大きな子供


ジョナサン・ジョースターは隣にいるディオ・ブランドー、いや、DIOが動いて、そちらに視線を移すと顔が間近にあり、するりと首に長い指が絡みついてきて、そのまま首に手をかけられたまま、押し倒される。
柔らかいソファーに身を沈める。
「……なぜ、反抗しない。おまえは波紋を使えるだろう」
突然のことに驚いて、動けなかっただけなのだが。
「君から殺気を感じないし――」
彼は首に手をかけているだけで、力を込めていない。彼の力なら、自分の首を折るなどたやすいことなどわかっている。
手を伸ばし、DIOの白い頬に触れる。
「なんで、君はそんな顔をするんだい?」
辛そうな、苦しそうな、今にも泣き出しそうな顔。その表情はどこか幼い。彼は自分より生きているはずなのに。
「知らん。教えてくれ」
「……ぼくにはもっとわからないなぁ」
首から手が離れ、覆い被さられる。重い身体を抱きしめると、甘えるような声で名前を呼ばれる。
慰めるように頭を撫でる。大きな子供のようだ。言葉にすれば、怒り出そうだと思い、心の中だけで呟くだけにした。


2020/08/31

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同じ時間 同じ道


DIOが目を覚ますと、ジョナサン・ジョースターが自分を見下ろしていた。その目はほの暗い。
視線だけを向けていると、手が伸びてくる。彼の白い手が自分の首を包む。ゆっくりと力が込められていく。息苦しさはない。呼吸はしていないからだ。
だんだんと首を絞めていく力が強くなっていく。彼の視線は締めている首に注がれている。
彼のしていることをただ受け入れていると、ハッとしたような表情になり、首から手が離れていく。
「なんだ、もう終わりか」
「……ぼく、は」
手のひらを見つめ、その手を合わせて握りしめる。まるで、何かに祈るように。
起き上がり、その手を解き、指を絡ませる。怯えた目がこちらを見る。
「おまえになら、殺されてもわたしはいいと思っている。ただし、おまえの手でな」
仮定だが、殺されることがあるなら、ジョナサンに殺されるなら本望だ。この手でとどめをさせるかは、甚だ疑問だが。自分の首を握りつぶすにはあまりにも弱々しい。
「だが」
彼を引き寄せる。触れる身体がびくりと震える。
「そのときは、おまえも道連れだ」
自分の世界にジョナサンは必要だ。大切な自分の片割れ。自分の半身。
「君は、ぼくが……」
言葉が切られ、うなだれる。この状態になるとなにも話さなくなる。
ジョナサンを抱きしめる。彼は自分を必要としているため、殺すことなんてできない。自分しか彼を愛せない、必要としていない。
ジョナサンを知る人間はもう皆、死んでしまった。自分だけなのだ。
彼を同じ時間を歩めるのは。


2020/09/07

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