出会いと再会と別れ 14
「ディオ」
後ろからいきなり抱きしめられた。横にある顔は、承太郎。
とても嬉しそうにしている。
「離せ!」
体に回る腕を振りほどき、彼のもとから逃げたしたが、すぐに誰かとぶつかった。
「大丈夫?」
見上げれば、それはジョナサン。
「ぼくのもとに来てくれたんだね」
嬉しそうに笑うと、抱きしめてくる。
「ち、違う……!」
彼の腕から抜け出し逃げていると、転んでしまう。
「くそっ……!」
二人に追いつかれてしまうと焦っているためか、体がうまく動かず、起き上がれない。
「大丈夫かよ」
気がつけば、そばにジョセフがいた。横から抱えられて、そのままお姫さまだっこされる。
「おれを選んでくれたんだろ」
嬉しそうに笑うが、自分は首を横に振る。
「違う……おろせ……!」
抵抗として、肩や胸を押すが、がっちりと固定され、何も変わらない。
「ジョセフ」
「ディオを渡せ」
二人が来て、ジョセフは嫌だと笑う。
「おれのだし」
「いや、ぼくのだよ」
「おれのものに決まってんだろ」
言い争う三人。
自分は物扱いか。
自分は誰の物ではなく、三人の姉ということでは満足できないのだろうか。家族というだけでは。
「ディオ」
「君は」
「誰がいいんだ?」
同じ顔が自分を見つめている。
追い詰められ、頭が動かず、言葉が出てこない。
そこから、少しでも逃げるために目を塞いだ。
目を開け、見えた光景に、今まで見ていたものが夢だったのだと安心したが、昨夜のことを思い出し、起き上がり、頭をかきむしる。
頭がボサボサになるが、気にしない。
夢見が悪い。朝から気分が悪くなっていく。
朝食では嫌でも、顔を合わせてしまう。ジョセフがいなくとも、二人に。
嫌だと頭を抱える。この家にいる限り。
「……そうだ、家にいるからだ」
ベッドからおり、クローゼットを開けた。
朝、朝食時にディオが来ず、使用人に聞くと、まだ寝ているのかと聞くと、部屋で食べるからと部屋に朝食を運びましたと。
朝食を食べ終え、承太郎と食堂を出て、自分たちの部屋に帰る途中で、トランクケースと共に部屋から出てくるディオ。こちらを見ると、見るからに動揺し、顔を真っ赤にする。
「おはよう、なんだい?その荷物」
可愛いと思いつつ、トランクケースを指すが、彼女は真っ赤になったまま睨みつけてくる。
「答える義理はない。退け」
そのまま、自分たちの横をトランクケースと共に歩いていくが、承太郎が前に立ちはだかる。
「邪魔だ、承太郎」
「出ていく気だな?」
そう承太郎が問うが、ディオは黙ったままだった。
「なんで……?君が出ていく理由なんて……」
自分たちといるのが、嫌ということだろうか。
ディオに手を伸ばせば、その手が叩かれ、拒否される。
「止めるなら、どこかの上流貴族のおっさんのところに嫁いでやる」
その発言と彼女の目に本気なのだと、手を引っ込めたが、許すわけにはいかない。彼女から結婚を申し込まれれば、男は喜んで首を縦に振るだろう。
「駄目だよ!それは、ぼくと……」
「それならおれと結婚しろ」
「黙れ!!お前らなんて……お前らなんてッ……!」
何か言いたそうだったが、承太郎を押し退け、トランクケースを階段にぶつけ、大きな音を出しながら、おりていく。危ないとついていくが、ついてくるなと怒鳴られる。
その音を聞きつけ、使用人たちが集まってきたが、彼女は玄関の扉を開け、出ていってしまった。
扉が閉まり、ディオの姿が見えなくなる。承太郎が追いかけようとしていたが、先程の発言が原因なのか、諦めていた。
使用人たちが何があったのかと聞いてきた。
「友人のところに、泊まるんだって」
本当は自分達が原因なのだろうが。
少し自分達と離れて、落ち着いて、気持ちの整理をすることも必要だろう。
一人になって、兄弟の存在を再確認するいい機会だろう。
彼女が行くところは予想がつく。
遠くには行かないだろうから。そんなに心配しなくていい。
ディオは、町へと向かいつつ、どこに泊まろうか考えていた。
勢いで飛び出したため、計画も何もない。
金はあるため、宿屋にでも泊まろればいいだろう。
そこから、学校や孤児院に行けばいい。
町に着き、ディオは宿屋に向かう途中、こちらに走ってくる足音に振り向いた。
「ママミーヤ、ディオ!今日も朝から、天使のよう、いや、女神のように美しいね」
朝から、よくそんな台詞が出てくるなと呆れつつ、シーザーを見る。
無視をして、宿屋に向かうが、彼は横にぴったりとついてきた。
「なんだい、その荷物?もしかして、あいつらに愛想尽かして、家を出てきたのかい?」
「ああ、そんなところだ」
冗談で言ったのだろう。彼は驚いていた。
「マジ……?」
「マジだ」
シーザーは前に来ると、自分の行く手を塞いできたため、歩みを止める。
「じゃあ、おれの家に来なよ!部屋は余ってるからさ」
願ってもいない申し出だが、彼の家には、ジョナサンが来るのではないか。
しかし、宿代や色々のことを考え、少し迷ったが、行くことにする。
「いいのか?」
「大歓迎さ!」
嬉しそうにシーザーは笑う。
荷物を持つよと、トランクケースを持ってくれた。
「案内するよ」
家へと案内する彼に大人しくついていく。
このことが、三人に伝わり、騒ぎだすのは、少し時間が経ってからである。
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