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目の前でホァンが笑顔で、お菓子をほおばっている。
棒状のチョコレート菓子。それは、部屋の温度で少し溶けて、チョコが袋に付いていた。
「バーナビーさんも食べる?」
ずっと見つめていたためだろうか、ホァンはこちらに一つ差し出す。
「いらないです」
「おいしいのに」
差し出していたそれは、口の中に消えていく。
食べている彼女は幸せそうで。見ているこっちも幸せな気持ちになってくる。
「ホァンさん、チョコが付いてますよ」
「え、どこ?」
顔のあっちこっちを触る手を優しく押しのけ、口の端に付いているチョコを指で拭う。
「とれましたよ」
指に付いたチョコを舐めとる。久しぶりのチョコは酷く甘い。
「ありがとう!」
彼女の笑顔に、自然と笑顔になる。
「どういたしまして」
鼻歌まじりに、ホァンはまた新しい袋を破っていく。
「やっぱり、食べたいです」
そう言うと、食べようとしていたのをこちらに差し出してくれた。
「はい」
口にくわえると、手が離れていく。自分で持ち、一口齧ると、甘さが口の中に広がる。
「おいしいですね」
「でしょ!」
一つ食べ終え、ホァンの食べかけを横から食べて奪う。
「あー!!」
こちらを見る表情は怒っていた。その顔も可愛いと思う。
「僕のだよ!」
「食べすぎです」
机の上には空箱と袋が散乱している。
「それで最後にしてください」
そう言っているそばから、新しいものに手を伸ばそうとしていた。
抱きしめて、それを阻止する。
「離してよ!」
「ダメです」
諦めたもか、残念そうにため息をつく。
抱きしめる彼女から、甘い匂い。食べていたお菓子のせいか、それとも。
「……甘いなぁ」
「何が?」
不思議そうに見上げてくるホァンの額に接吻を落とす。
抱く想いが甘いのか。