毒を毒で制せ

布団で横になっている氏康は苦しそうに息をしている。
汗をかき、しかし、顔は青く。普通ではない体の反応。
特殊な毒にやられた。この世界で、妖魔しか扱えない毒らしい。そして、珍しい類いだと。
それは、敵の武器に仕込んであり、甲斐姫を庇って、敵の攻撃を受けた氏康が、毒に蝕まれてしまった。
「氏康」
名を呼ぶが、反応がない。
あの、契約が切れた時の感覚を思い出す。あの、虚しさ。糸が切れたような感覚。
それは、契約主が死んだことを、嫌でも知らされた。
「お館様……」
部屋に入ってきたのは、甲斐姫。水を入った桶を運んできたらしい。
彼女は、氏康がこうなった原因を作ったと、責任を感じているようだ。まだ、氏康が話ができていた時は、気にするなと言っていたが。
自分の横に座ると、桶を置き、額にある布を水に濡らし、額に置く。手ぬぐいで汗を拭いていく。それをしている間も、彼女は泣きそうな表情。
「甲斐」
部屋に入ってきたのは、孫呉の姫君。この世界で、できた甲斐姫の友人だ。
「仙界の人たち、戻ってきたわ」
「ホント!?」
孫尚香と共に部屋を出ていく。
この氏康を蝕む毒は、仙界にある植物で治せるらしい。人間界のものは、一切、効かないと説明を受けた。
一人の人間のために、わざわざ、仙界まで戻ったという。
「小太郎……」
名前を呼ばれ、振り返ると甲斐姫がいた。一緒に来てくれと言うので、付いていくことに。

「実は、これは人にとっては、劇薬なのです。あの……もしかしたら……」
そう説明するかぐやも、悲痛な表情を浮かべている。
はっきりと言わないが、死ぬ可能性があるようだ。毒を制するのは毒。よくいったものだ。
「でも、それしか治せないのよね?」
「はい」
手段がそれしかない。甲斐姫は、手を差し出す。
「大丈夫よ。お館様は強いんだから」
受け取ろうとしている手は震えている。
「大丈夫、なんだから」
薬包紙に包まれている薬をかぐやは甲斐姫へと渡すが、それを横から取る。
「小太郎……!」
何をするんだと言うように、睨みつけられた。
「飲ませるのだろう」
部屋へと戻る。

部屋へと戻り、氏康に薬を飲ませようと、呼びかけたが、反応がない。
水を持ってきた甲斐姫は、不安そうにしていた。
少量の薬と水を飲ませれば、全て戻した。薬を飲むことも、辛い状態。
氏康の口元を拭いている甲斐姫に、外に出ていろと言う。
「なんで?」
「無理矢理、飲ます」
その姿を見せるわけにはいかない。氏康だったら、絶対、見せたくはない姿だろう。やろうとしていることは、少女には、刺激が強すぎる。
「出ていろ」
言葉を繰り返せば、甲斐姫は渋々だが、部屋を出ていった。
この薬は人間には、毒。形は人なれど、そこの枠組みからはみ出している自分は、この薬に蝕まれたとしても、耐えられるだろう。少しは毒にも耐性がある。
腕がいきなり、掴まれたが、すぐにずり落ちていく。
「よう……まだ、現し世だな……?」
見れば、少し開いた目が、こちらを見ていた。生命力に溢れた男だ。
「まだ、な」
片足くらいは、あの世に突っ込んではいるが。
まだ、氏康は必要とされている。この世界でも。元の世界でも。そして、自分も。あの喪失感を味わいたくはない。
「少し口を開け」
そう言って、薬と水を口の中へと、流し込む。薬特有の苦味が広がる。
氏康の後頭部へと手を添え、首を持ち上げれば、額にある布が落ちる。それを気にせず、唇を重ねた。
少しずつ、ゆっくりと、薬を流し込んでいく。彼が薬を飲み込んだのを確認をし、また、少し流していくのを繰り返して。
長い時間をかけ、全て飲ませると、唇を離し、頭を枕へと戻した。
氏康は、何か言いたけだったが、寝ろと手で視界を覆い隠した。
まだ、治ってはいない。この薬が毒ごと氏康を殺しかねないのだから。
唇が自分の名を呼ぶ。
目を覆う手に、手が添えられた。

氏康が寝たことを確認し、部屋を出た。
「小太郎!どうなの……お館様は?」
扉の横でずっと待っていたのだろう。
「後は、氏康しだいよ。薬は飲ませた」
薬が勝つか、人が勝つか。それは、見守るしかないだろう。
彼女は、いてもたってもいられないと、部屋に入っていく。

水を口に含み、吐き出す。口の中には、まだ苦味があった。しかし、仙界の薬を飲むことなど、滅多にない経験だろう。
「フ……」
これで、耐性がつけば、人界の毒など、効かなくなるのだろうか。
人には劇薬。この存在が蝕まれれば、人という枠組みに収まっているということだ。

氏康が寝ている部屋に戻れば、かぐやがいた。横には、船を漕ぐ甲斐姫。
「少し時間が経てば、薬が効いてくるはずです」
こちらを見る目は、不安気に揺れている。
「……そうか。氏康を少し頼む」
かぐやは、微笑んで了承をしてくれた。もう限界を越えている甲斐姫を抱え、彼女を寝床に運ぶことにした。

「どうだ?」
声だけかければ、かぐやはまだですと、返してきた。
音もなく彼女の横に降りる。
「もうよい、我がみる」
そう言えば、いつでもお呼びくださいと、頭を下げ、出ていく。
二人きりになった暗い部屋。座り、氏康を見れば、薬が効いているようで、その寝顔は穏やかだ。
しかし、油断はならない。いつその薬が毒に変化するか。
その時がいつでもいいよう、氏康のそばにいることにする。

薬を飲ませて、二刻過ぎた頃。
「がっ……はっ……」
いきなり、苦しそうにする氏康。
「っ……ぐっ」
薬が毒になっているのだろう。浮かべる表情は、苦悶に歪む。
のたうち回り、かけている布団さえも、吹き飛ばす。水が入っている桶もひっくり返し、床が濡れた。
声をあまり出さないところを見ると、彼は耐えているのだろう。
「氏康」
名を呼べば、血走り、見開いた目がこちらを見た。呼吸が荒い。
いきなり、こちらに掴みかかってきた。勢いと力に、そのまま後ろに倒れ込んでしまう。ここに甲斐姫がいないことに安堵する。彼女を襲っては洒落にならない。
腕を掴まれ、爪が皮膚へと食い込む。肩に顔を寄せると、口を開き、噛まれた。痛みに少し顔をしかめる。噛む力に、そのまま、食われてしまうのだろうかと思う。この肉はおいしくはないだろうに。
どうやら、見境をなくしているようだ。理性をなくした獅子など、ただの野獣でしかない。人ということをやめてしまったように。
それか、理性を保つために、このようなことをしているのか。
「勝て、氏康」
抵抗はしない。死ぬような傷ではないからだ。
背に腕を回し、抱きしめれば、胸元にもう一方の手が爪を立て、ひっかかれた。伝わるのは痛みだけ。血は出ていないようだ。
だんだんと噛む力も弱まり、彼の呼吸も収まってきた。腕を掴む力も弱くなっている。
「こた、ろう……」
苦しそうに自分の名を呼ぶ。どうやら、氏康は勝ったようだ。やはり、しぶといと笑う。
起き上がろうとした氏康が、覆い被さってきた。どうやら、気絶したようだ。
聞こえる呼吸は穏やかなもの。
不安は消え去る。氏康を寝床に戻し、床に広がる水も拭く。
ただ、朝が来るのを待った。

陽が登り、部屋にも光が届く頃に、名前を呼ばれ、閉じていた目を開ける。
「帰ってきたみてえだな」
そう言い、氏康は笑う。部屋に入ってくる光が、彼の髪を輝かせる。
「クク……うぬは、しぶといな」
「ド阿呆、俺がそう……」
言葉を切ったのを不審に思えば、彼の視線は体の傷に。
「おい、それ」
「獣と戯れただけよ」
気にしなくていい。少し噛まれ、ひっかかれただけだ。あの時の記憶があるかは定かではないが。
氏康は起き上がると、頭をかく。ばつが悪そうな顔を見るに、記憶はあるようだ。
「……!」
いきなり、体の内を痛みが駆け巡る。肉を内蔵を、食い破られているような感覚と激痛。
薬だ。口に含んだ時に、少し体内に入ってはいると思ったが。こんな痛みを彼は耐えきったのかと、少し感心する。
仮面など、かぶる余裕などなく、顔を伏せ、傷つける前に、彼から遠退こうとしたが。
腕が引っ張られ、胸へと飛び込む形に。背に腕が回り、体と体が密着する。触れる肌に、傷つけたい衝動がかきたてられる。
「はなっ……せ……!」
身をよじったが、何も変わらない。
「お前だって、こうやっただろうが」
理性が吹き飛べば、彼に何をするか分からない。意識を取り戻した時には、目の前には、分断された四肢と血が、部屋に飛び散っているかもしれない。
痛みに意識が朦朧とする。
「入ってくんな、坊主!!」
耳元で大声を出され、意識を少し取り戻す。
今は、氏康を傷つけないことに集中しているため、他の気配など探れない。
「お館様?」
後ろから、甲斐姫の声が聞こえる。飛び出して、襲いたい衝動にかられるが、それは氏康に一層、抱きしめられ、阻止された。
「扉、開けんなよ!!いいな!」
彼女が入ってくれば、確実に狙うだろう。弱いものを、確実に殺せるものを。
自分の肌に爪を立てる。痛みは伝わらない。中の痛みしか分からない。液体が肌を伝っていく。
「傷をつけるなら、俺にしろ。ド阿呆」
手が掴まれ、その手が彼の肌に触れる。
「……っ……ぐ……!」
それができれば、とっくにしている。
握りこぶしをつくり、傷つけないようにした。爪が手のひらに突き刺さる。
まだ体を駆け巡る痛み。息も、うまくできないようになってくる。
「小太郎」
何度も名前を呼ばれた。返事などはできない。痛みに耐え、理性を手放さないことに必死だった。
「うじ……やす……」
痛みがひいていき、名前を呼ぶ。
「耐えたか」
握りこぶしをやめれば、血が滴っていた。
抱擁をとかれ、自分を見てみれば、体のあちらこちらに、血が流れていた。無意識に、体を傷つけていたのだろう。
「てめえは……」
氏康が何か言っていたが、途中から聞こえなかった。
安心した途端、視界が暗くなったのだ。

目を覚ませば、かぐやと甲斐姫が見下ろしていた。
「小太郎!」
「氏康様、小太郎様が」
横になっている自分の下に、柔らかいものを感じる。布団で寝るなど、初めてかもしれない。
「気がついたかい、おばけさん」
声をした方を見れば、煙管を吹かしながら、氏康が笑っていた。
「入ったら、あんたは血だらけで……びっくりしたわよ」
体を見れば、防具は外され、手当てをされていた。
起き上がろうとすれば、かぐやに安静にと制された。布団で寝るなど、珍しいことだ。起き上がるのをやめ、布団に体を沈める。
「てか、なんで、あんたまで、あの薬を飲んでるのよ」
甲斐姫の発言で、少し周りの雰囲気が変わる。
氏康の顔を見た。無表情だが、煙管を持つ手が止まっている。どう理由を言おうかと悩んでいるようだ。かぐやを見れば、なんとなく分かっているようで、少し顔を赤くさせ、目を伏せている。
彼女に正直に話そうか。してしまえば、卒倒する気がする。
「……仙界の薬に興味がわいてな……少しつまんだ」
笑って言えば、彼女は口を開けたまま、呆然としていた。
「ば、馬鹿じゃないのッ!毒だって分かってるのに!」
やはり、自分が部屋にいるべきだったと、怒る。うるさい子犬だ。彼女の声を雑音と聞き流す。
しかし、驚いた。自分は人と言うべきには、曖昧な存在だが、あの薬が猛威をふるった。人という枠組みからは、抜け出せていないようだ。
「騒ぐんなら、出ていけ、ド阿呆。怪我人がいるんだぞ」
「そうだな……傷に障る」
「う……」
氏康共々、たたみかければ、甲斐姫は大人しくなった。
「氏康、治ったと聞いたぞ!」
部屋に入ってきたのは、孫堅。しかも、その後ろには、野次馬を引き連れて。
おかげで一気に騒がしくなった。ついさっき、静かになったと思ったら。ため息をつくしかなかった。
「てめえら、うるせえ!!外に出やがれ!」
氏康によって見舞いに来ただろう、全員が追い出された。氏康も部屋を出た。
部屋の前で、まだ騒いでいる。それは、だんだんと遠ざかっていった。
氏康は、苦しむ姿を見られたくないと、見舞いは全て断っていた。部屋には、一部の人間しか入ることを許していなかったのだ。
そのこともあり、治ったと聞いて、押し寄せたのだろう。心配する声は、様々なところから聞こえていた。

時間が経っても、氏康が帰ってこない。
「かぐちん、小太郎、頼める?」
甲斐姫は、氏康がすぐに帰ってこないことを気にしている様子だ。どうせ、治ったことにかまかけて、酒を飲んでいるのだと思うが。
「はい」
「ごめんね」
様子を見てくると、彼女は部屋を出ていった。
かぐやと二人きりになり、目を閉じていれば。
「氏康様は、小太郎様を大切に思っておられるのですね」
突然、おかしなことを言う。
「……戯言を」
目を開け、かぐやを見れば、微笑んでいた。
「傷の手当ても、全て氏康様がお一人で。私たちが手伝うと申し上げましたが、断られました」
それは、氏康が責任を感じてやったことだろう。一部の傷は、彼がつけたのだから。
「こうなったのは、氏康のせいだからな……」
上げた手は包帯が巻かれている。動かしにくい。
「おい、かぐや!」
氏康が部屋にいきなり入ってきた。驚くかぐや。
「な、何かご用でしょうか?」
「てめえも行ってこい。坊主がうるせえ」
どうやら、甲斐姫が呼んでいるようだ。
近くに座る氏康からは、酒の匂い。やはり、酒を飲んでいたようだ。
「あ、あの」
氏康とこちらを交互に見る。
「おばけさんなら心配すんな。早く行ってこい」
頭を下げると、かぐやは立ち上がり、部屋を出ていった。
「病み上がりで酒か」
あれだけ苦しんでいながら、酒を煽る元気があるとは。喜ぶべきか。
「あんま、飲んでねえ」
そう言いつつ、布団のそばに座る。戻るのかと、思いきや、ここにいるようだ。
「我なら大丈夫だ……戻れ」
寝ていれば、治る怪我だ。看病など必要ない。
返事は返ってこなかった。
彼の勝手だ。好きにすればいい。暇に耐えきれなくなったら、戻るだろう。
「……氏康」
「なんだ?」
「手当てしたのは、うぬだと聞いた」
そう言うと、舌打ち。余計なことを、という呟きが耳に届く。
「まあ……なんだ、俺のせいだからな」
妙に素直だ。病み上がりだからだろうか、酔っているのだろうか。
「感謝するぜ、小太郎」
そう言い、彼は笑った。
お礼を言葉にするなど、彼らしくなく。
しかし、あの鉄砲の音を聞いただけで、怖がっていた小さな子供が、いつの間にか、大きくなり、今や数多くの命を背負う大きな存在になった。
体だけ大きくなったものだと、思っていたが。彼は、成長しているのだ。
「しかし、てめえがあんなこと、しやがるとはな」
何を言葉が指しているのか、分からず、問う。
「あんなこと、とはなんだ?」
「口移しだよ」
それは、薬をまともに飲めない人間に、無理矢理、飲まそうとしていたのだ。確実な方法だろう。
「それがどう……」
言葉を切る。やはり、異性の方が良かったかと、考える。しかし、甲斐姫にあの薬は危険だ。しかも、案外、純粋無垢な彼女に口移しができるとは思わない。かぐやにでも、任せればよかったか。
「我で残念だったな」
笑みを浮かべながら、氏康を見ると、彼はまっすぐにこちらを見ていた。
笑って、残念だったと、言うのだと予想していた。
彼は何も言わない。代わりに手が伸びてきた。手は後頭部に回り、頭が持ち上げられる。それは、口移しした時に、自分がしたこと。
唇が重なり、意識を現実に戻した。
何をしているのか、分からずに動けなかった。やり返しなのか。戯れなのか。
「……!」
舌が入ってきて、堪えきれなくなり、殺気を放つと、感じ取ったのか、すぐに唇が離れた。
「戯れが過ぎるぞ」
頭に回された手はそのままだ。
「戯れじゃねえと言ったら?」
「な」
また、唇が重なった。
舌が入ってきた。舌が重ねられ、生ぬるさと歯をなぞられ、感じたことのない感覚に困惑する。
やめさせなければ。
「っ……!」
氏康が離れ、頭が手が滑り、枕へと落ちる。
着物を着崩し着ている彼の、開いた胸に、まっすぐに引かれている赤。
「てめぇ、目立つとこに、つけてんじゃねえよ」
それだけで済んだことに、逆に感謝してほしいものだ。やろうと思えば、首が吹っ飛んでいたのだ。
体を起こし、顔を傷に近づける。濃くなる血の匂い。
垂れそうになっている血を舌ですくうと、氏康の体が少し身動ぐ。
「……誘ってやがるのか」
「座興よ」
口の中に広がる血の味。唇についた血を、指で拭い、それを舐める。
その様子を、氏康は食い入るように見ていた。わざと、見せつけるようにやっていたので、一つ一つの所作はゆっくりだ。それを、瞬きさえも忘れた目が追うのが、分かった。
「暇つぶしだ。付き合ってやろう……」
恋、愛というものなど、知りもしないが、与えられるというならば、それに少しは触れてみてもいいだろう。
「その言葉、本気にするぞ?」
「うぬの好きにせよ……」
腕が伸びてくる。
「お館様あ!!」
大声と共に、部屋に飛び込んできたのは、甲斐姫。
突然のことに、氏康の動きが止まる。
「なんで、戻ってこないんですか!全然、飲んでなかったじゃないですか!」
氏康へと、迫る。その顔は真っ赤になっており、彼女から酒の匂いが。
「戻って飲みましょ!!お館様の為の宴ですよ!」
氏康を立ち上がらせようと、引っ張る。
「おい、坊主」
「小太郎も来ればいいのよ!こんなところで一人でいるよりは、怪我も早く治るわよ!」
滅茶苦茶なことを言い、自分の腕も引っ張ってくる。
あまり騒がしいのは好まない。行けば、逆に怪我は悪化しそうな気がする。
「甲斐様!」
かぐやが慌てて、やってきた。
「かぐちーん、あんたも言ってよー。お館様と小太郎にー」
腕を離し、かぐやに近づくが、体を支えきれなくなったのか、かぐやに抱きつく形に。
「甲斐様、飲み過ぎでございます……!」
「私は、大丈夫ー、えへへ」
甲斐姫は、かぐやから離れ、また氏康の腕を引っ張る。諦めていないらしい。かぐやが、一緒に戻ろうとしていたが、聞き入れてもらえず。
氏康は、分かったよと、立ち上がる。甲斐姫は喜びながら、腕に抱きつく。
「小太郎、寝てろよ」
返事はせずに、布団に横になった。
「小太郎も連れて行きましょうよー」
「おばけさんは、おやすみだ。ド阿呆」
腕に抱きつく甲斐姫を、ひきずる形で、氏康は出ていった。
二人に続いて、出ていこうとしたかぐやを声をかけ、引き留める。
「何かご用でしょうか?」
「氏康の胸の傷、手当てを……それだけよ」
「かしこまりました」
かぐやは頭を下げ、部屋を出ていく。
かけ布団を手繰り寄せ、目を閉じた。
ここは、氏康の寝床だが、自分が占領している今、帰ってきた彼はどこに寝るのだろうか。
しかし、寝てろと言ったのは、彼自身。
邪魔なら退けるだろうと、深い眠りへと堕ちた。





後書き
小太郎もまんざらではないという
口移しがやりたいが為に書いたので、あとがグダグダです
小太郎は氏康さんが亡くなった時の記憶があればいい
契約、切れてたみたいですし
北条家の三人が可愛い
ハアハアする……と言うと、ただの危ない人ですね
かぐやがいるのは、薬があると言った言い出しっぺだから
甲斐ちんと言わせたかったのですが、なんか違うと、やめました

こっそり、Pixivに続きのR18を投稿してます


2012/10/08


BacK