Trick or Courage?

日はハロウィン。そして、バーナビーの誕生日だ。
誕生日プレゼントを渡したのはいいが、自分が渡したのは、バーナビーとホァンが一緒に休憩室に入っていってしまったから。手を繋いで、笑顔で。
渋っていたら、スカイハイが届けようとしていたので、プレゼントを奪い取り、自分が行くことにした。空気が読めない彼は、二人の雰囲気を壊しかねないからだ。
市長の息子を預かった時から、あの二人は仲が良かったが、あれだけべったりとし始めたのは、ここ最近だ。
ホァンのように相手に素直に甘えられたら。
それをしようにも、自分はそれほど子供でもなく、相手は自分の気持ちに気づいていない。
告白してしまえば、と何度も思った。それをしてしまうと、彼と自分の関係が変わってしまう不安が、口を閉じさせる。
トレーニング室に戻り、渡したことを伝えれば、そこで解散となった。誕生日パーティーはやらないらしい。バーナビーに提案したところ、ホァンと二人っきりで過ごすからと断られたと。
部屋を出ていく、皆を見送りながら、ホァンの身を心配する。幼い彼女に手を出しはしないだろうが、男女な訳で。
扉が開き、思考を止めた。
「お、ブルーローズ」
虎徹は入ってくると、一直線でこちらに向かってくる。何か用だろうかと、ただ見つめていた。
「あのさ、ちょっと相談にのってくれね?」
この通りと、頭を下げる。
彼から相談など珍しい。了承しようとしたが、今日はハロウィンだ。
笑みを浮かべる。
「……トリックオアトリート」
ハロウィンの決まり文句を言うと、驚いたような顔がこちらを見た。
「ただじゃ、嫌よ」
言葉の意味が分かったらしく、頭をかき、分かったと返ってくる。
「食べたいケーキがあるの」
「おごらせてもらいます」
決まりだと、トレーニング室を出る。

店員に食べたいケーキを注文し、虎徹の相談にのる。
その内容は、バーナビーの誕生日プレゼントについて。
「お前ら、もう渡したろ?」
「渡したわ。まだ、悩んでたの?」
彼はバーナビーのパートナーだから、個別に贈れと、自分たちのプレゼントからは外したのだ。
ずっと悩んでいたのは知っている。他のヒーローたちからもアドバイスをもらっていたはずだが。
「あいつの喜びそうな物がなあ……」
どうやら、思いつかないらしい。相棒としてずっと仕事をしてきて、何を見ていたのだろうか。
「お前なら、何が嬉しい?」
「……私のは参考にならないわよ」
自分は、バーナビーではないし、彼から贈られたものなら、なんでも嬉しいのだ。前に貰ったタオルだって、大切にしている。
「あいつと歳、近いだろ」
「男のあんたの方が分かるでしょ」
そんな言い争いをしていたら、ケーキが運ばれてきた。
チョコレートとカボチャムースのケーキ。チョコレートで作られたコウモリが乗っている期間限定のケーキだ。
「食べ物じゃ、駄目なの?」
ケーキを見て、提案を一つ。好みはあるとはいえ、食べ物は無難な一つだ。
「あいつ、喜ぶか?」
「贈ろうとする気持ちが大切なのよ」
ケーキを一口、食べる。
「ここ、他にもお菓子、売ってるわよ」
このお店には、ケーキの他に色々な焼き菓子が売っている。
「一緒に選んであげるわ」
「そーするか……」
ケーキを食べ終わった後に、一緒にお菓子を見ることになった。

数種類のお菓子を選び、ちゃんとラッピングもしてもらい、バーナビーの誕生日プレゼントができあがった。
なぜか、買ったのは彼ではなく、自分だが。
そして、一つ、ココアのクッキーが自分の手に。
「ありがとな」
ケーキだけで充分だったのにと、思ったが、追加らしい。
「ありがと」
素直にお礼を言えば、いいってと頭を撫でられる。
「じゃあな。俺……」
そこで、別れようとする彼を服を掴み、引き留める。
「と、途中まで送って……よ……」
このまま、別れるのは寂しく、もっと彼といたかった。
送ってもらう時間ではないため、断られるのだろうかと、不安で彼を見たが、了承してくれた。
「付き合わせたのは、俺だからな」
服は掴んだまま。手なんて繋げないけど、腕を組むなんて、到底できないけれど、これくらいなら。
彼は離せとは言わなかったが、何回か腕を動かした。しかし、自分が離さずにいると、諦めたのか、動かすのをやめた。
「……手でも繋ぐか?」
いきなりの提案に、顔を真っ赤にするしかなく。
「なーんてな、こっちだよな?」
頷けば、彼は笑いながら歩き出す。それに自分はついていく。
冗談で言われた言葉だと、分かっているが、繋ぎたいと言えば、彼はやってくれるのだろう。大きな手に手を持っていこうかと思ったが実行できず。
他愛もない話をしている内に、家に着いてしまった。





後書き
一緒にバーナビーの誕生日プレゼントを選んだ話
焼き菓子系にしたのは、オジサンが選びそうにないから
カリーナちゃんは、最初で勇気を使っちゃったのですよ


2012/10/31


BacK