私たちの時間を邪魔する者は吹き飛べ

キースはページを捲る。これは、台本。ドラマに出演することが決まり、その台詞を覚えている真っ最中だ。
台詞の量が、結構あるのだ。主人公と会話するだけだが、それが、このドラマの重要なシーンらしい。
完璧にしなくてはと、同じページを行ったり来たりしていた。
「!」
いきなり、横から体重をかけられ、台本から目を離し、そちらを見れば、ユーリが自分にもたれかかっていた。
首を動かして、彼を見れば、眠っているようで。手には、開いた本が。
彼は、小説を読んでいたはずだが、睡魔に負けてしまったのだろう。
最近、仕事が忙しいらしく、自分もなかなか会えなかった。あまり寝てもいないのだろう。
静かな部屋に、彼の小さな寝息が響く。
静かに台本を机に置き、彼の枕に徹する。
彼の寝顔を見ているだけで頬が緩む。ずっと見ていても、飽きることはない。
このまま時間が止まればいいのにと思ったが、呼び出し音が部屋に響く。幸せなこの時間が終わりだと言うように。
慌てて止めようとしたが、彼が目を覚ました。
温もりが離れていくことに寂しさを覚える。
通信を繋げれば、写し出されるアニエス。
出動要請があったことと、事件の概要が伝えられる。
通信が終われば、差し出される上着。お礼を言いつつ、受け取り、着ながら、玄関へと向かう。
「いってらっしゃい」
「いってきます!そして、いってくるよ!」
彼と愛犬に見送られ、家を出た。

「君たちが……私の時間を……!許さない!そして、許さない!」
「おお!スカイハイの技が炸裂!犯人たちを一網打尽ですっ!!」

「あの子……なんか怒ってない?」
「知らないわよ!全部、もっていかれた……!」
「今日、スカイハイの周りの風が強すぎて近づけなかったよ」
「俺ごと攻撃するか……普通」
「いやあ、ありがとうなロックバイソン!」
「ロックバイソンさんが壁になってくれなかったら、僕たちも吹き飛んでいました」
「死ぬかと思った……」

犯人を警察に引き渡すと、スカイハイはインタビューもあまり答えないうちに、帰ってしまった。

その様子をテレビを通して見ていたユーリは、首を傾げた。
台本の台詞を覚えることを邪魔されたのが、そんなに不快だったのだろうかと。
的外れのことを考えながら、ジョンと一緒にキースの帰りを待った。





後書き
幸せな時間を邪魔されるのは嫌だなというお話
スカイハイさんはユーリのためにダッシュで帰ってきます


2013/03/01


BacK