ジャンクフード
昼時はやはり、飲食店は込んでいる。そんな賑わう店を視界の端で捉えながら、道を歩いていく。
昼休憩など関係ない。今は、早く執務室に戻り、書類をまとめなければ。今日は会議があったはずだ。
いきなり、走ってきた男性と肩がぶつかる。その衝撃で持っていた封筒を落としてしまった。
「す、すみません!」
それだけ言うと、急いでいるのか、走り去る。
封筒を取ろうとすれば、先にそれを取る手が。
「どうぞ」
拾ってくれた人を見て、驚いて固まってしまった。
笑顔で封筒を差し出す人物は。
「スカイ、ハイ」
ヒーローの名前で呼ばれたことに驚いていたが、すぐに笑顔に戻る。
「……あ!どこかで見たことがあると思ったんだ!ユーリ・ペトロフ管理官だね」
差し出されている封筒を受け取り、礼を言い、頭を下げる。
「昼食かい?」
賑わう店を指しながら問われ、違うと首を横に振った。
「今から、戻るところです。そんな暇、ありませんので」
「私もなんだ」
スカイハイは手に持っている紙袋を見せてきた。それは、ジャンクフード店の紙袋だった。
「大変ですね」
「おたが……」
彼の言葉を遮るように、手首にある通信機が鳴る。
事件が起きたらしい。
空中に写し出される画面には、やはりアニエスが。
「ボンジュール、ヒーロー」
事件の概要が手短く伝えられた。
それを見終わると、スカイハイは何かに気づいたように、紙袋を差し出してきた。
「食べる暇がないから」
「いえ……私も」
貰っても困るのだ。食べる時間なんてない。
「管理官には、少し多いかもしれないけど」
無理矢理、紙袋を押し付けてきた彼は、手を振り、笑顔で走り去っていく。
一人残され、押し付けられた紙袋を見ていたが、捨てるのも、もったいない。
今日中に食べればいいだろう。
早歩きで、ジャスティスタワーを目指した。
執務室に戻れば、連絡が入っていた。
会議が中止になったという。
昼の休憩さえ犠牲にし、仕事を片付けたのは、無駄だったらしい。
「……」
机の上の紙袋。
今、昼休憩を取っても別にいいだろう。
紙袋を手に取り、開けた。