小さな教室

聞き覚えのある足音が聞こえてきた。
ため息をついたが、羽扇で口元を隠した。
「司馬懿殿ー!」
手を降りながら、来たのはガラシャだ。
変な指令が来て、連れてきた少女だ。何度か会話している内になつかれてしまったらしい。
あまり、子供や女性に好かれるということはあまりなく、内心、非常に戸惑っている。
「何の用だ?」
冷静を装う。仮面を被るのは得意だ。
「司馬懿殿に、色々と教えてほしいのじゃ!」
他の者に聞けと言っても、なぜか自分に、教授してほしいと来る。教えることは嫌いではない。自ら学ぼうという姿勢も。
「わらわたちは、ダチなのじゃから」
彼女が言うダチと言うものは、友人を指しているらしい。
自分たちは、そういう関係になる程、親しくはないはずだが。
「今日は、何が聞きたいのだ?」
一度、捕まってしまえば、まとわり付いて来るのが彼女だ。
相手をした方が何倍もマシだ。
「なんでもよい!司馬懿殿の話は興味深いのじゃ」
前は何を話したのかを、思い出しながら、口を隠していた羽扇を扇いだ。

椅子代わりに、岩の上に座り、話を聴かせる。
ガラシャは箱入り娘だった為か、知らないことが多過ぎだ。
普通に生活していれば、少しは情報が入るはずなのだが、それすらない。
中身は、見た目よりずっと幼い。
「はあー、それは凄いのじゃ!」
何もかも、彼女にとっては新鮮なのだろう。目を輝かせ、熱心に話を聞いていた。
話一つで、驚いたり、怖がったり、笑顔になったり、忙しそうに表情は変わっていく。
疲れないのかと、思う。
休憩を挟もうとするが、次、次と、急かしてくる。
話す方も、少なからず体力は使うわけで。
「……今日は終いだ」
無理矢理、終わらせるのが常だ。
「えー!まだまだ、聞きたいのじゃ」
立ち上がれば、服の裾を掴まれる。
「明日、続きを話してやる」
「では、約束じゃ」
ガラシャは、小指を立たせる。約束する時は、小指を絡ませ、誓い合うと、説明を受けた。
小指を絡ませ、約束だと言うと、ガラシャは、顔を見上げてくると、首を傾げた。
「顔が赤いようじゃが……?」
「き、気のせいだ!」
異性との肌の触れ合いなど、ないに等しい。
小指を離せば、約束だと念入りに言われ、陣へと戻っていく。
明日は何を話そうかと、考えているのに気づき、楽しみにしているのは自分ではないかと思い始め、それは絶対ないと、頭を振った。





後書き
ガラシャと司馬懿コンビが可愛い
純粋なガラシャとツンデレ司馬懿で、悶えました
オロチはなぜ、あんなに萌えを与えてくるのか
司馬ガラ増えないかな


2013/03/01


BacK