目次

題名からその小説にとびます

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人の好意くらい素直に

ジョナディオ・雨宿りする二人

奪いたい

承ディオ・チョコを奪います

ファーストキスは大人の味

ジョナディオ・ジョナサンのファーストキス

花冠の君

ジョナディオ・ジョナディオとまではいかない

誠実

ジョナディオ・仲は良くない二人

ケーキは空腹を満たさない

DIOとジョナサンとジョルノ・2018ジョナサン誕生日祝い










人の好意くらい素直に



頭に何かが当たるのを感じ、曇天を見上げれば、頬に冷たさを感じた。降ってきたらしい。
「ジョジョ、貴様がのろまのせいで、雨が降り始めたぞ」
隣にいる兄弟は濡れたらしい頬を拭っていた。
「君だって、買い物で悩んでいたじゃあないか」
言い争っている間にも、段々、雨足は強くなるばかり。
「あそこで、雨宿りしよう!」
雨の中を走り、石橋の下に避難する。
「やむまで、待つしかないね」
「ああ」
ハンカチで濡れた頬や髪を拭った。
町まで買い物に来たが、雨に降られるとは。天気が変わりやすいのはいつものことだが、降られると気が滅入る。
荷物は確認したが、包装だけが濡れているようで、中までは濡れてはいないだろう。
濡れたためか、風が吹きつけると少し寒く、体が震える。
いきなり、肩に重みと温もりを感じる。ジョナサンが着ていた上着が肩にかけられていた。
「ちょっと濡れてるけど」
向けられる笑顔が癪に触る。彼からの優しさなどいらない。惨めなだけだ。
上着を肩から外し、ジョナサンに差し出すが、くしゃみが出た。
「着ていた方がいいよ」
ジャケットは奪われ、また肩にかけられた。
「貴様が着ているものなど、着たくはない!」
引き剥がしにかかれば、肩に手をあてたまま、彼は頭を下げる。
「着てください、お願いします……その、す、透けて……」
言いよどんだ言葉に、自分の姿をよく見る。今日着ているのは、白いブラウス。濡れてしまった布は、肌に張り付き、透けて肌が見えていた。
見上げる彼の顔が赤い。その視線はどこにやってよいのか分からず、泳いでいた。
「み、見るなっ!」
上着を手前で交差させ、胸を持っていた荷物で覆い隠す。
「だ、だから、隠したじゃあないか!」

雨宿りの間、二人の間には気まずい雰囲気が流れ、お互いに顔を背けながら、顔を赤くするしかなかった。


2014/12/24

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奪いたい



承太郎がディオの部屋を訪れると甘い匂いがしてきた。
中にいるディオはソファーに座り、箱を持っていた。
「なんだ、承太郎。匂いに誘われたか」
こちらに気づき、振り向いた彼女はそれを差し出してきた。近寄り、中身を見るとチョコレートだった。
「もらったんだ」
彼女はその中を一つ、摘まむと口の中に入れる。彼女は食べる素振りをみせないのを食べないと判断したのか箱を机に置く。
「いや、食べる」
屈み、彼女の頭に手を添え、こちらに向かせ、口を重ね、中にあるチョコレートを奪う。溶けかけているそれは、ほどよく甘く、美味だった。
呆けている彼女の口の端にチョコレートが付いており、中にあるチョコレートを噛み砕き、喉を通して、舐め取ろうとまた顔を近づけると頬に痛み。
「あ、阿呆ッ!」
彼女は自分を突き放し、立ち上がると足早に部屋を出ていった。
痛む頬を撫でながら、先ほど見た、真っ赤になり、戸惑っていた彼女の表情を思い浮かべていた。


2014/12/24

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ファーストキスは大人の味



ジョナサンは父親のパイプを勝手に拝借し、木の上で吸っていた。
駄目だと言われるものに興味を持つのは子供の当然の好奇心だ。後でこっそり返しておけば、ばれないだろう。
「お前にそれはまだ早いだろう」
下から聞こえた声に飛び上がる。手に持っていたパイプを落としてしまい、下を見れば、落ちたパイプを少女が拾っていた。ダニーは彼女に近づかないように距離を置いて、おすわりをしている。
木から飛び降り、彼女の前に立つ。
「ディオ」
パイプを眺めながら、彼女は嘲笑う。
「このこと、だ、黙っていてほしいんだけど……」
これがばれたら父に怒られてしまう。食事抜きでは、すまないだろう。
「お願い、します」
懇願して言うと彼女は分かったと言う。
「ほ、本当!?」
「ああ、でも、パイプなんて、吸うものじゃあない」
一瞬で彼女の顔が近づいてくる。唇に何かが触れる。
「まずくなるからな」
そう言った彼女は微笑んで、自分から離れていく。
彼女は背を向け、動かないダニーへとパイプを投げる。それを見事に口で受け止めるのを見届けると屋敷へと歩いていく。
「……!」
顔がみるみると熱くなっていくのが分かった。ディオとキスをしたということを理解していったのだ。
「ど、どうしよう、ダニー!ぼく、ディオと……ファーストキス……!」
パイプをくわえ、近づいてきたダニーに抱きつく。
どうしていいか、分からない。
ほんのちょっとの時間、触れた唇の柔らかさ。味はパイプの味しかしなかった。
ダニーが自分の抱擁から抜け、パイプを差し出してくる。それを手に取り、涎まみれているそれをハンカチで拭う。
もうパイプを吸う気にはならず、これは洗って元に戻しておこう。
ついでに自分の顔も洗っておこう。少しは熱も冷めるだろうから。
ダニーと共に屋敷へと走り出した。


2014/12/24

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花冠の君



家に帰ってきたディオは頭に花冠を被っていた。
ディオはそれをジョナサンにやると言って頭に被せてきた。
「どうしたんだい、これ」
手に取り、それを見る。様々な花が編み込まれて作られているそれは、色鮮やかで綺麗だった。
「教えてやったんだ」
子供たちが花冠を作っているのを見ていたら、一人、子供がやってきて作り方を知っているかと聞いてきたので、頷くと教えてほしいと輪の中に連れていかれたという。
「久しぶりだったが、やり始めるとなかなか楽しくてな」
これはお手本として、彼女が作ったものらしい。
「教えたお礼に、秘密の場所に連れていってくれるらしい」
そう言う彼女はそのことを楽しみにしているようで、目が輝いていた。
「服を準備しなければな……じゃあな、ジョジョ」
閉まった扉を見つつ、また花冠を被った。

翌日、久しぶりにズボンをはいたディオが泥だらけになって帰ってきて、使用人たちが何かあったのかと大騒ぎすることになった。


2015/11/01

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誠実



ジョナサンは本を読みながらうとうとしており、目を覚ますために顔を洗おうと見ていた本を閉じた。
立ち上がり、部屋を出る。視界は、はっきりとしているが、頭にはまだ靄がかかっている。
大きなあくびをしながら、廊下を曲がると前から衝撃がきた。
「!」
物が落ちる音が響き、意識がはっきりとする。
「きさま……」
怒りを含んだ声にこちらを睨みつけている義理の妹。
「ご、ごめん、ディオ。前を見てなかった……!」
ぶつかったときに彼女が持っていた本が落ちたらしい。膝をついてそれを拾おうとしたが、落ちている本に挟まれていたのだろうしおりが目に入った。
「これ……」
手に取ると、菫の押し花のそれは自分が幼いときにあげたしおりだった。喧嘩をして仲直りをしてほしいとしてあげたもの。
こんなもので、自分の機嫌がなおるものかと怒られたような覚えがある。
「返せ!」
乱暴にそれが取られた。見えないように手で覆われてしまう。彼女は決まりが悪そうにしている。
「ずっと使ってくれてたのかい?」
本を拾い、彼女に差し出すと引ったくられるように取られた。
「……おまえからの贈り物にしては、センスがよかったのでな」
彼女はそう言うと、自分の脇を通っていき、彼女は自身の部屋に入っていった。
最近の贈り物は難癖をつけられ、全然、受け取ってはくれないのに。
彼女が好みそうなものを渡してはいるのだが、空回りしている。
あれを渡したときの幼い自分のセンスがあれば受け取ってくれるのだろうか。

部屋に入ったディオはジョナサンにぶつかったときの痛みを思い出し、持っていたしおりを床に投げつけようと腕を振り上げたが、その腕を下ろした。
このしおりに怒りをぶつけても、なにもならない。
これは幼いときにジョナサンが泣きながら、仲直りしてくれと迫ってきたので、しかたなく受け取ったものだ。あまりにもしつこいから。
大事にしていたのは、このしおりに使われている押し花の菫の色が気に入っていただけ。それだけの理由だ。


2015/11/01

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ケーキは空腹を満たさない



「誕生日おめでとう、ジョジョ」
「おめでとう、パパ!」
起きると、妻と息子が、ケーキを持ってきてくれた。少し不揃いなトッピングにそれが手作りだということを理解する。
「今日はぼくの誕生日だったね」
最近、日付の感覚がなく、誕生日なんて忘れていた。歳をとっても意味がないからだ。
ジョルノがどんなケーキを食べたいかと、頑張って絵に描いてくれたことがあったが、これのためだったのだろう。
「ママと一緒に作ったんだよ!」
「ありがとう、ジョルノ、ディオ」
ディオが自分より早く起きているなんて珍しいと思ったが、一緒にケーキを作るためだったのだ。
「目、つぶって、頭おろして!」
不思議に思っていたが、ジョルノが小さい体の後ろになにか を隠しているのに気づいて、目を閉じて、少し屈んだ。そうすると、頭になにかのせられた。
「あけていいよ」
許可がでたため、目を開けると、ジョルノは似合うと嬉しそうだ。
鏡を見ると、自分の頭には王冠がのっていた。少し歪な宝石が散りばめられている。
「今日のしゅやくだから」
「ありがとう、とっても素敵な王冠だね」
ジョルノの頭をなでると、彼はマシュマロのような頬を赤らめて笑う。
「ケーキは一口食べてもいいかい?」
ディオはケーキを持ち上げる。
「見せに来ただけだ。食べたいなら早く着替えて食堂に来い」
「みんな、待ってるよ、パパ!」
頷けば、自分の服が頭にかけられた。
「さっさと支度しろ。ジョルノ先に戻るぞ」
「早くしてねー」
服をとり、着替えていく。
あのケーキはきっとおいしいのだろう。最近は人の食べ物を食べていなかったから。
この空腹をあのケーキで満たされれば、どれだけ幸せだろうか。
着替えを終え、用意されていたワインの瓶を一口飲んで、王冠をかぶり、食堂に向かった。


2018/04/07

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