似た者同士

ソファーに腰かけるDIOは声をかけてきた存在を見上げる。
「隣、いいですか?」
無表情で問われ、勝手にしろと黙って見ていた本に視線を戻す。立っていたジョルノはため息をつき、自分から距離を開け、ソファーに座る。
ジョルノは会ってから、時々だが自分のそばにいた。よく会いに行っているのはジョナサンの方だ。楽しそうに会話をしているのを何度か見かけた。
彼はそばに来たからと言って、会話という会話をすることもない。一言二言、言葉を交わすだけで、その後は静かだ。
「何を読んでいるんですか?」
「つまらん小説だ」
「つまらないものを読んで、楽しいですか?」
「ただの暇潰しだからな」
暇潰し相手であるジョナサンは今、孫と義理の娘にとられている。
今日も会いに行けば、二人がおり、独り占めはずるいと言われ、ジョナサンも彼らと交流したいと言い張られ、部屋から閉め出された。
だから、自分はジョナサンが帰ってくるまで、本を読んでいる。つまらないとしてもだ。
独り占めにして何が悪い。彼は自分のものなのに。
「お前はなぜ、ここにいる?」
ジョルノの仲間もここにいる。一緒にいる様子はとても楽しそうだったのだが。
「喧嘩が始まったので、避難してきただけです」
彼らの仲間は、なかなかうるさそうだと、面々を思い出す。
「……?」
ジョルノを見ると何も持たずに、ただ座っているだけ。暇ではないのだろうか。というより、なぜ、自分の部屋に来たのだろう。用事ではなさそうだが。
視線に気づいたのか、彼はこちらを見る。
「なにか?」
なにも――と視線をそらすと机に置いてある読み終わった本が目に入り、それを彼の前に滑らせた。
「それなら読めるだろう」
彼が本を手に取る。
「……原文で読んでるんですか?」
それはイタリア語で書かれている小説。
「それくらいなら、すぐ読める」
視線を文字の羅列に戻した。
分からない言語でも、辞書があれば読める。知識を得るのは最大の暇潰しだ。元から勉強は嫌いではない。
「どんな話ですか」
「田舎出身の少年のサクセスストーリーだな」
「面白いんですか?」
「それを決めるのは、お前自身だ」
少し間があいて、本を開く音がした。
話はつまらないが、独特の言い回しや細かな描写はなかなか面白かった。
静かな部屋にページをめくる音だけがしていた。

ディオは本を読み終え、本を机に置き、隣にいた存在のことを思い出し、そちらを見れば、ジョルノはソファーにもたれかかり寝ていた。
読みかけの本が、開かれたまま彼の膝の上に置かれている。
それを取り、開かれているページを見てみると、自分がつまらないと思ったところだった。
睡魔に襲われてそのまま、負けてしまったのだろう。
扉がノックされ、返事をすれば、扉が開く。入ってきたのはジョナサンだった。よくやく、自分のもとへと帰ってきたようだ。彼は口を開けたが、ジョルノに気づいて口を閉じた。
近くまで来ると、声を潜めて話しかけてきた。
「二人で何をしてたんだい?」
彼は眠っているジョルノを見て微笑んでいた。
「本を読んでいた」
積み重なっている本を見て、彼は納得したようだ。
「何か、かけるものを……」
キョロキョロと辺りを見回しながら、彼は自分から離れていこうとする。
「うわっ……!」
腕を掴み、彼を自分の横へと座らせた。
すぐ近くに感じる彼の熱い体温。
「とう、さん……?」
聞こえた言葉に自分もジョナサンも反応したが、彼が呼んでいるのはジョナサンだ。
彼が嬉しそうにたまにジョルノが父さんと呼んでくれると報告してきていた。
「まだ、寝てていいよ」
ジョナサンは彼の方向に向いたので、前のめりになり、ジョルノを見ると、ジョナサンが肩に手を回し引き寄せる。ジョナサンに寄りかかった彼はうっすらと開いていた目を、また閉じていった。
ジョナサンはジョルノの頭をなでている。見えなくても、笑っているのが分かった。
自分もジョナサンに寄りかかる。こっちにも構えと。こちらはつまらない本を読んで、わざわざ、来るのを待っていたというのに。
「君たち、やっぱり似ているね」
なぜか、彼の声が弾んでいる。
「素直になればいいのに」
そう言いながら、彼はジョルノにしたように自分の頭をなでてくる。子供扱いしているのか。その手を払い、時を止め、彼の膝の上に頭を乗せ、腰に腕を回して目を閉じた。

ジョナサンはいつの間にか、膝枕をしているディオをそのまま受け入れた。スタンドの力だろう。
二人は無言で甘えてくる。ディオはその自覚がないようだが、そうやって自分にだけ甘えてくるのだ。とても似ている。親子なのだから、当たり前なのだけれど。
ジョルノは、ディオと交流したいようだが、彼は自分に構っていることが多い。ディオはディオなりに彼を意識しているようではあるが。
意図して、二人きりにしているが、あまり交流は進んでいないらしい。二人とも、互いに素直になり、言葉を交わせばいいのだ。近くにいるのだから、本など読まずに。
簡単なことが二人にとっては難しいらしい。
「不器用なところ……本当にそっくりだよね」
呟いた言葉は二人に届いているかは分からない。





後書き
言葉にしろってお前ら!な無駄親子です
二人とも交流したいんですが、いざしようとなると、困るタイプだと思っています
男同士だし殴りあってもらいましょうか。手っ取り早い感じがします


2014/12/17


BacK