信じて
メアリーが去った後、残されていたのは、折れた茎と、青い花弁。
花弁が散るたびに、体に痛みを走った。
全て散れば――あまり想像したくなく、頭を横に振った。
ギャリーはどうなったのだろう。先に行けと言われたが、心配でたまらない。
階段を下り、ギャリーと別れた所には。
「……!」
壁に背を預け、座っているギャリーがいた。
駆け寄り、名を呼んだが反応がない。
「……」
顔を見れば、目を閉じている。
分かった。眠っているのだ。歩きまわったり、石像を動かしたりしていたから、疲れて眠っているのだ。
自分が寝ていた時に、ギャリーは起きていたみたいだった。
ここに来てから、たぶん、休んでいないのだ。
今は、休ませてあげよう。
だって、彼は後から追いかけて来ると、言ったから。
込み上げてくるのを堪えた。
見れば、ギャリーの手にはライターがあった。
持っていこうにも、ポケットにはもう入らない。
迷った末、彼に貰ったキャンディーを食べる。
あの時、ギャリーがくれた物だったから、もったいなく思えて、食べれなかった。
レモン味のとても甘く、おいしいキャンディーだ。
キャンディーを食べ終え、ライターを手に取る。
借りるのだ。後から返そう。
彼が自分のところに帰ってきた時に。
怒られるかもしれないから、勝手に借りてごめんなさいと、言おう。
少し触れた肌の冷たさは、自分の体温が高いからだ。
ライターを握りしめ、階段を登っていった。